大理石寺院(ワット・ベンチャマボーピット)
ドゥシットエリアの北にある、現国王の住まいのチットラダー宮殿の西に位置し、屋根以外の建材にすべて大理石を使用して建てられた寺院で、英語ではマーブル・テンプルと呼ばれています。この寺院は、189年にラーマ5世によって建立が始まり、長期間の工期を経てラーマ6世の時代になってようやく完成しました。
その特徴的な建材とデザインは、ラーマ5世がヨーロッパ旅行の折に見た欧風建築で使われている大理石の美しさに魅かれ、異母弟のナリッサラーヌワッティウォン親王とイタリア人の建築家にそのアイデアを伝えて設計させたものです。
壁や柱、床を覆っている純白の美しい大理石は、この寺院建立のためにわざわざイタリア北部のトスカーナ州カララから取り寄せられたものが使われており、本堂のみならず、本堂前の階段に並ぶ狛犬のような狛獅子から手摺や塀、回廊の床の石畳に至るまでその大理石が使用されており、一辺の妥協もなくここまで徹底した使われ方には心から感服するものがあります。
白い大理石とのバランスを考えたのか、屋根瓦も一般に使われているものとは異なり、色鮮やかなオレンジ色の瓦が使われており、ラーマ5世のデザイン感覚とその指示に従って設計した2人のセンスには素晴らしいものを感じることができます。
また、金張りの窓枠にはタイ様式の模様が描かれたステンドグラスがはめ込まれ、欧風の素材や技術とうまく折衷・融合されている一面をうかがうことができます。本堂に安置されている黄金色に輝く本尊の仏像は、北部のピッサヌローク県にあるワット・マハタートの本尊を模したもので、深緑色の壁を背にして光り輝く姿には圧倒される美しさがあります。
その本尊の鎮座する台座には、建立創始者であるラーマ5世の遺骨が納められています。本堂の裏手には、アジア各地から集められた様々な表情を持つ仏像が安置されており、日本から渡った仏像もありますから、諸国の仏像の表情を見比べてみるのも興味深いです。